[少年サッカー]技術編 : パスについて text by 鈴木哲夫 all rights reserved |
パスについて その1→はじめに |
パスについて その2→定義1 |
パスについて その3→定義2 |
パスについて その4→定義3 |
パスについて その5→技術的要素 |
パスについて その6→状況判断−1 |
パスについて その7→状況判断−2 |
パスについて その8→状況判断−3 |
パスについて その9→アイコンタクト |
パスについて その10→パターン認識 |
パスについて その11→動きの原則 |
パスについて−その1 はじめに |
これは、どこかに書かれていた、とか誰かから聞いたという話ではなく、今まで私がサッカーをやってきて、また指導者としていろいろ勉強してきた中で私なりに組み立てた「技術論」です。 よって、ある部分、かなり自分なりの思い入れや拡大解釈が紛れ込んでいる可能性もあります。ですから、そのまま鵜呑みにせず、皆さんなりの解釈を是非してみて下さい。 |
パスについて−その2 定義1 |
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さて、「パス」なのですが、これは一体何なのでしょう?この「パス」という技術を考えるにあたって、まず一番最初に考えなければならないのがこの「パスとは何か?」なのだと思います。 この「パス」の定義を考える前に、「サッカーとは?」という基本命題をしっかり定義しておかないといけません。つまり、それだけ「サッカーの本質」に密接に関わっているのです。
いろいろな状況がゲームの中で発生しますが、すべてはこれに帰結するのです。 つまり、「守備的」に戦っても、その目的は「相手のゴールマウスに相手より多くボールを運び込む」ことであり、すべてのプレーがこの目的に向かって行われている訳です。 「相手より多く」という事は、1点を取るための「攻撃」も必要だが1点を守り抜く「守備」も必要になる、と言うことです。 89分間守り通して、1分のカウンターで点を取り勝つのも立派な「サッカー」ですし、90分間攻め続けるのも「サッカー」です。 子供のサッカーの場合、とにかく「攻め」を中心に物事が考えられる傾向があるのですが、(この傾向は私も賛成ですけど)指導者としては、ゲームが終わった時に「相手より多く」得点を取るために「攻め」と「守り」がある、という事を忘れてはいけません。 サッカーには「攻め」と「守り」の2つの局面がある、逆に言うと、「攻め」と「守り」の2つの局面しかないのです。 すべてのプレーが点を取り、点を取られないために行われているのです。「パス」を考える時、どうしても「攻め」の意識が強くなります。しかし、「守るため」にも「パス」は発生します。 つまり、「今は攻めているのか守っているのか?」という一番基本的な「状況判断」が、まずはすべてのプレーの大前提になる、という事です。 ページトップへ戻る |
パスについて−その3 定義2 |
さて、「ボールを相手のゴールマウスに運び込む」ために何が効果的か? これが「手」を使って良い競技であれば、手でボールを「保持」する事が出来ます。 手を使えば、一度保持したボールは余程の事がない限り、相手に奪われる事はありません(バスケットボール、ハンドボール、ラグビーをイメージして頂ければ解ると思いますが)。 つまり、「保持」したまま相手ゴールまで運び込めば良いのです。 ただ、一人が「保持」したまま相手ゴールまで移動するのは、その選手の足の速さに完全に依存しますし、時間と体力がかかります。 そこで「パス」が生まれるのです。味方から味方にボールをつないで運ぶ。この「パス」のメリットは、まず、一人が「保持」しながら走って運ぶより圧倒的に早い。 そして役割分担というか、人間が移動する距離を大幅に短縮出来るので、体力的にも無理が少ない。これほど良いことはありません。 でも、「パス」にはデメリットもあります。「バスケットボール」を例に取ると、「手で保持」している間はまず相手に奪われないのですが、「パス」した瞬間に空中で、あるいは味方がそれをキャッチする前に、「相手に奪われる可能性」が生じるのです。 先の発言で「サッカーには攻めと守りの2つの局面しかない」と書きましたが、これは別にサッカーに限った事ではなく、どんな球技でも発生します。 基本的に自チームがボールを保持した時が「攻めの局面」であり、相手がボールを保持すれば、「守りの局面」になります。 まず「ボールを保持」する事が「攻め」のための必要条件なのです。 「パス」はその「ボールを保持する」という優位性を奪われる可能性があるプレーなのです。そのリスクのトレードオフとして「ボールを早く・疲れずに運べる」というメリットがあるのです。 実は、「サッカー」は手を使ってはいけないため、この「ボールの保持」についても常にリスクがつきまとっています。これが手を使った他の球技と決定的に違う点で、サッカーを面白くしている最大の要素なのです。 ちょっと話が脱線するのですが、他のスポーツで、この「ボールの保持」に対してのルールをいくつか比較してみましょう。 手で完全にボールを保持したなら相手に奪われないで簡単に相手ゴールまでボールを運ぶ事が出来てしまうのです。 それでは興味が薄れてしまうので、例えばラグビーでは「前にボールを投げる」事は禁止されています。 バスケットボールではボールを持って「3歩以上歩く」事が禁止されています。 これらのルールはすべて「手で保持したら簡単には奪われない」ために制約を設けてゲームを面白くするために作られたものです。 この「手で保持する優位性」をルールにより規制して、守備側のチームにもチャンスを与えているのです。 サッカーの場合、足でボールを保持しますが、手でボールを抱え込むような事は出来ませんので、いつでも「ボールを晒している」状態なのです。 つまり「ボールを保持」していても攻守が切り替わる(ボールを奪われる)可能性がある競技なのです。 で、「ボールを相手ゴールまで運ぶ」には一人で運ぶ(ドリブル)が良いのか?みんなで運ぶ(パス)が良いのか?という話になります。 ページトップへ戻る |
パスについて−その4 定義3 |
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ボールを完全に(安全に)保持出来るのならば、自分で相手ゴールまで持って行くのが正しい選択でしょう。 しかし、サッカーの場合、保持していても「ボールを(相手に)晒している」のですから、「相手にボールを奪われる可能性」という意味では「パス」であろうが「ボールキープ&ドリブル」であろうが同じようなものだ、と考える事が出来ます。 同じリスクなら、「早く・疲れない『パス』」のほうが良いに決まっています。 「サッカーは究極のパスゲームである」と誰かが言っておりましたが(誰が言っていたのかは失念しました)、これは本当にその通りなのです。 今までの発言をまとめると、
「パスとは何か?」その答えがこの、「ボールを運ぶ技術の一つ」という、言ってみれば、当たり前のことなのですが、今までうだうだ述べてきた「サッカー」という競技の特性(ボール保持の不確実性)により、いろいろな事態が発生します。これを「前提」とした上で「ボールを運ぶ技術の一つである『パス』」を考える必要があるのです。 さて、ここで、「パス」と「ドリブル」の特性をまとめてみたいと思います。
戦術的な特性も加味するともっとあるのですが、とりあえず今は「特性」としてはここまでを挙げておきます。 ページトップへ戻る |
パスについて−その5 技術的要素 |
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さて、ここからが本題となるのですが、「パス」の技術的要素を考えてみましょう。 パスを成功させるには次の2つの技術的要素が必要になります
パスを出す側/受ける側に共通して必要なのが「状況判断」なのですが、これの詳細は次の発言に譲るとして、「パスを出す側」は「状況判断」がしっかり出来ていれば、あとはそこへ「蹴るだけ」なのです。 パスを出すタイミングや強さ、ボールの種類(蹴り方)等々、細かい「技術的要素」もありますが、基本的な技術として必要なのは「蹴る技術」だけなのです。 ???と思われる方もいると思いますが、正しい状況判断が出来ていれば、パスを出す側としては既に90%が成功しているようなものなのです。 後は思った通りの方向へ、思った通りの強さで、タイミングよく蹴る事が出来れば(パスを出す側としては)100%成功、となるでしょう。 一方、パスを受ける側も「正しい状況判断」の元に、パスを受ける位置へ移動出来たならば、あとは「ボールを止める(受ける)」だけです。 これは、トラップ・ストップの技術ということになるのですが、受けるときの体の向き(ボディーシェイプ)や、ワンタッチでどこにボールを落とすか、という、ボールを受けた時の技術要素を除けば、「パスを受ける位置へ移動」できていれば「パス」は90%成功したも同然です。 「ボールを蹴る」「ボールを止める(受ける)」技術だけなら、小学校の低学年でも練習しておりますし、ちゃんと蹴れる子供も、止めることが出来る子供もおります。 味方が蹴ったボールを味方が受ける、という事を「パス」と定義するなら低学年でも「パス」は成立します。 ・・・もうお分かりですよね(^^;。 「パス」を成立させるにはパスを出す側/受ける側に「状況判断」が必要であり、低学年ではそれが難しいために「パスサッカー」は無理だ、というのが私の持論なのです。 では、その「状況判断」とはいったい何なのでしょう? ページトップへ戻る |
パスについて−その6 状況判断−1 |
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「状況」は
そして、「状況判断」とは「試合中の(今の)状況を判断する」ということであり、上記の1.2.3.の状況を把握した上で、今自分がどのような状況下にあり、どのようなプレーを選択しなければならないか?を「判断する」ということです。 ・・・言葉だけではあまりにも抽象的なので(^^;、これらの「状況」をマトリックスにまとめてみます。
この「試合中」の状況は「定義1」にも出てきましたが、まず「戦術的な判断」が大前提としてあります。それは、 「今が攻撃すべき時なのか?守るべき時なのか?」という、チーム全体のコンセンサスが必要となるような「状況判断」です。 これには2つあり、「チームの戦い方」として「守備的に戦うのか?攻撃的に戦うのか?」という最上位の「戦術レベル」の判断と、もう一つは「今は堪え忍ぶ時間帯」とか、「流れを切らさないために攻めつづける時間帯」とか、「残り時間を逃げ切る」とかいった、試合の中で訪れるいわゆる「流れ」に沿った判断があります。これが「1.大局的判断」といえるでしょう。 「攻撃/守備」の戦術的判断の次にくるのが、「どのエリアでプレーが行われているか?」という「2.局所的状況」の判断です。 上のマトリックスでは「エリア」としておりますが、ボールのある位置(プレーしているエリア)により、同じプレーが許される場合もあれば許されない場合もあります。例えば、自陣ゴール前で細かいパスを交換する馬鹿はいませんよね。でも、相手のDFを崩すため、前線あるいは中盤での細かいパス回しは許されます。同じプレーでも「状況により」使って良い場合(場所)と悪い場合(場所)がある。 で、これを表したのが「アタッキングエリア」「ニュートラルエリア」「ディフェンスエリア」の3つなのです。それぞれのエリアの範囲は、コートを3つに分割して、
この、自分が今どこのエリアでプレーしているか?という「位置的状況」により、選択されるべきプレー(求められるプレー)が違ってきますし、当然、パスの質も違ってくることになります。 このあたりはいろいろな本にも出ていますので簡単にまとめてしまうと、
ま、ボールの保持に限っても、「自分が(ボールを)持っている時」と「味方が持っている時」では取るべきプレーは違います。 そして、上記マトリックスには書けなかった「個々の状況」として 1.ボールの位置 2.ゴールの位置 3.味方の位置 4.相手の位置 の組み合わせにより、「まったく同じ状況」は2つとない事となるのです・・・だからサッカーは面白いのですが。 ページトップへ戻る |
パスについて−その7 状況判断−2 |
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「攻めるべきか/守るべきか」という前提(流れ)を理解した上で、今プレーされている「エリア」での状況判断がある。今回はその先の、「個々の状況判断」の原則について触れてみます。マトリックスをもう一度使わせて頂きます。
●これらの事は、子供でも結構理解できますが、難しいのは、この次の、「自分がボールを持っていない」場合に、それぞれの局面でどう動かなければならないのか?という所なのです。 ページトップへ戻る |
パスについて−その8 状況判断−3 |
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さて、「ボールを持っていない時」の動きなのですが、前述のマトリックス@からBまでの個々の状況での原則を述べる前に、すべての場合に共通な前提を書いてみます。それは、「予測(アンティシペーション)」です。 言ってみれば当たり前なのですが、この「次のプレーや展開を予測する」ことなくして、パスの受け手となる動作は不可能です。 例えば、A君がニュートラルエリア中央で前を向いた状態でボールを持ったとします。 それを見たB君は『A君は次にこう動く(またはこうボールを出す)だろう』と「予測」して自分の動作を決定します。 ★レベルが上がれば上がるほど、次のプレーだけではなく、次の次のプレーを「予測して」動作を開始する必要があります。 「第3の動き」と呼ばれる部分が当たり前に出来るようになれば「プレーの幅」も相当広がるのですが、子供のサッカー(中学生・高校生含む)ではなかなか出来ないのが現実のようです。 ボールを持っていない状態ですから、プレーの選択権は自分にはありません。しかし、「次の状況(または次の次の状況)」を予測し、今より「より良い状況」をチームとして得るためにB君は何らかの判断をし、動き出さなければなりません。(この「より良い状況」というのが「大局的状況」と「局所的状況」の組み合わせで違うのはもうおわかりですよね) この、「自分の動作」を決定するための判断要素には
1.の「チームでの決まり事」というのは、例えば「ボールを奪取した瞬間にボールを素早く展開してサイドから攻撃する」というチーム戦術を取っているチームであれば、右サイドディフェンスエリアでボール奪取できそうだ、と判断した瞬間に攻撃的ハーフの選手は、中央のボール奪取した選手に見えるスペースに動き、左サイドバックの選手は攻撃的ハーフ経由で左サイドにボールが展開される、次の次のプレーに対応するために左サイドのスペースに駆け上がります。 ・・・こういった「チームでの決まり事」は上の年代になると必須ですし、これらの決まり事を守れない(あるいは理解できない)選手はチームには不要とまで言われることになります。 ここで重要なのは「決まり事」がいくつかある中で、「今の状況(または次の状況)」がどの「決まり事」に該当するのか?を的確に、しかも全員が同じ判断もとに行動することでしょう。(=状況の共通理解)。 ★子供のサッカーの場合、こういった「決まり事」は不要だと私は思っております。最低限の「決まり事」は必要ですが、上記の例のようなことを子供に実行させようとすると、「オートマチック」に、「考えることなく」全員動きなさい、という事になってしまいます。 2.の「A君の癖」なのですが、これは「こういった状況ではA君は必ずこういったプレーをする」という、長年つき合っていると解る個々の選手の特徴を指します。 チームに合流したばかりの「新しい選手」が試合の中で孤立したり、パスが通らなかったりするのは、その選手の癖を周りの選手が理解しきれていないからです。 「この状況ではA君は必ずドリブルする」とか「いったん後ろに戻して前に抜け出てくれる」とかが周りの選手に解っていればそれを「予測」して次の動作を決めることができます。 1.の「決まり事」を徹底している訳ではないのに「チームワークが良い」というか、「うまく機能している」チームというのは選手同士の「お互いの理解」がある場合が多いのだと思います。(これは少年サッカーでは結構重要な事です) 3.の「自分なりの状況判断」は、ごくごく普通にやっているもの全体(つまり1.や2.を特に意識する事なく、次にどうなるのか?どうなった方が好ましいのか「感覚」で動く場合全体)を指しております。 サッカーは特別な場合(リスタート等)を除き、まったく同じ状況というがありません。 すべての状況で上記1.や2.を判断しながらプレーを選択するというのは実際には不可能で、「自分の感覚」で次の動作を決める事が圧倒的に多いのです。 この「感覚」というのは「センス」と置き換えても良いかもしれません。 論理的に考えたらそんな位置に動いているのはナンセンスなのですが、イレギュラーしたり、クリアミスしたりして「偶然」そこにボールが出てしまう、それを嗅ぎ分けているのか、「何故かそこにいる」というのがこの「感覚」の良い例でしょう。 ただ、これは教えられるものではありませんし、「組織サッカー」の対極にあるものなのですが、最後の最後にはこの部分がものを言ってしまうのも「サッカー」の面白さだと思っております。 ・・・まぁ、この話をし始めると、「技術論」からかけ離れてしまうのですが、「理屈だけではどうしようもない部分」があって、それが結構重要だ、というあたりで話を止めておきたいと思います。 ★子供を指導する時、指導者が正しい動き(状況判断)を教えられずに選手の「感覚」に依存している場合が結構あるような気がしています。 この3.の「感覚(センス)」はあくまで「最低限の決まり事」や「味方の癖」を理解した上でプレーが出来るその先にあるべきもので、応用問題なのだ、という意識のほうが良いと思います。 最低限の基礎問題(正しい状況判断のパターン)をまずは教えるべきだ、と私は思います。 で、これらの「判断要素」から実際に「判断」する技術的ベースとなるものに「アイコンタクト」と「パターン認識」があります。 ページトップへ戻る |
パスについて−その9 アイコンタクト |
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ボールを持った味方の次の動作を「予測」する事を考えた時、必ずいくつかの選択肢が出てきます。 先の例で、ニュートラルエリア中央で前を向いた状態でボールを保持したA君の場合を考えてみましょう。 状況にもよりますが、A君の選択肢は山程あります。大きく分けると
「ドリブル」にしてもどちらの方向に、どのタイミングまで保持するか?により何十通りもの選択肢が出てきます。(ドリブルには「突破する」「スペースを埋める」「タメを作る(時間をかせぐ)」の3種類ありますが、今回はパスの話なので、詳細は省略します) さらに、2番目の「パス」を考えた場合、「大局的な状況」「局所的な状況」である程度は次のプレーの選択肢は絞られますが、実際にはパスの方向、距離、強さの組み合わせパターンはまだ何通りもの可能性があるのが普通です。 これらの選択肢のどれをA君が選択するか?ということをB君は判断しなければなりません。 【状況判断3】で書いた「決まり事」や「A君の癖」を理解していたとしても何通りかの選択肢がまだ残ります。 結局A君が「何を考えているか?」を予測するのに一番確実なのは「A君との意志の疎通」をはかることであり、そのために「目を合わせる」ことなのです。 この「アイコンタクト」は指導者講習会でもしつこく言われますが、形だけ「目を合わせる」のではなく、「次にどんなプレーをしよう(したい)と思っているのか」をお互いに知らせ合う事が目的です。 的確な状況判断をしていたとしても、まだ残る数通りの選択肢の中から「どれを選ぶか?」を確定させる極めて重要な技術要素がこの「アイコンタクト」なのです。 ★余談ですが、良いDFになるためには、相手の「アイコンタクト」を盗み、次のプレーを予測してインターセプト出来なければなりません。 そして、攻撃側の選手は「アイコンタクト」をフェイントに使えるくらいにならないといけないのでしょうね。(中には本能的でやっている子供もいますが・・・) パスを受ける側のB君からすると、「アイコンタクト」が出来ていて「次にここに来る!」とはっきり解っていた場合と、同じ場所へ同じボールが出たとしても)アイコンタクトなしでいきなりボールが出された場合では、次のプレー(次の次のプレー)に対応する時間的余裕が全然違います。 プレッシングがきつく、時間的余裕を持たせてくれない近代サッカーにおいて、こうした「一瞬の躊躇」が致命傷になる事が多々あります。 「判断のスピードが遅い」という日本サッカーの弱点はパスを出す側について言われているように思いがちですが、実は受ける側にも同じことが言えていることに注意する必要があるでしょう。 ページトップへ戻る |
パスについて−その10 パターン認識 |
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次に「パターン認識」なのですが、これは「アイコンタクトは出来た!ではどう動く?」といった場面や、「アイコンタクトはできなかったけれど、次の次にはこうなるはずだから、こう動こう!」といった場面で「自分の動き方」を決める要素です。 例えばワンツー(壁パス)での突破をはかる時、ボールを持っているA君と壁役になるB君の間には以下のような状況判断とパターン認識が発生します。
パターン1.2.とも壁パスは成功したとします。 でも、どちらが良いかを考えた時、2.が良いのは言うまでもないでしょう。 上記の例では★がパターン認識で、◎が判断(決断)です。判断のスピードが早い、ということは、次のプレーに移るのも早い、という事で、パターン1のように、「ボールが来てから判断」しているようでは(将来)良い選手になることはできません。 「あ、壁パスだな」と次のプレーを予測するためには「壁パス」という「パターン」を知っていなければなりません。 アイコンタクトがあり、相手と目があった瞬間に次のプレーを予測するためには、その状況での一番有利なプレーが何であるかの共通認識が必要で、そのためにいろいろな状況の中での選択肢の「パターン」をお互いに持っている必要があります。 (ボールが来てみなければ次の次の状況(=味方の動き)が解らない、というのであれば「判断」は遅れるばかりです。この次の動き(または次の次の動き)を予想するために必要なのが「パターン認識」なのです) 2対1の局面での突破のパターンに限れば、「壁パス」「スイッチ」「オーバーラップ」位しかパターンはありません。 それらのうちどれをA君は求めているのか?を目があった瞬間に理解することが必要です。 そうなるためにはこれらの「パターン」をしっかりチームの中で練習しておく必要があります。 ★これが「突破における2対1」のパターンです。攻撃でも守備でもその「原則」に「局面における数的優位の確保」というものがあります。 まず、どうやって「2対1」という数的優位を作るか?という基礎問題(^^;がありますが、それはこの連載の後ろの方でまた出てきます。 ここでは「2対1」になったら必ず突破できる(あるいは守りきれる)という「パターン」が小学生年代で教えるべき事のひとつなのですよ、というところで、請うご期待。↑ツマリ、マダアル、トイウコトデス ページトップへ戻る |
パスについて−その11 動きの原則 |
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さて、アイコンタクトとパターンの認識が出来たとします。次にボールを保持していない選手は実際に動き出す訳ですが、ここで「どこに」動くか?という重要な問題があります。 スを出す側と受ける側で「決まり事」があり、認知された「パターン」があったとしても、練習の中で実際に行っている「パターン」とまったく同じ状況はまずありませんから、お互いに何らかの「原則」に従い、次の行動を起こすことになります。 例えば「壁パス」を例に取れば、壁役のBくんはAくんの走っている足下にボールを返すでしょうか? またはAくんの進行方向の逆(つまり後ろ)にボールを出そうとするでしょうか?・・・キックミスがない限り、Bくんは走っているAくんの「前」にボールを出すようにします。 【状況判断2】でもちょっと出てきましたが、攻撃側に「より良い状態」というのは、
という状態をパスを出す側、受ける側ともに意識していなければなりません。これは「攻撃の原則」と言っても良いでしょう。 この状態を作るために、例えばFWは相手DFのマークを外し、スペースに抜け出す努力をしますし、あるいは2列目の攻撃的MFに中央のスペースを供給するためにマーカーを引き連れて外へ逃げる動きをしたりします。 そこで作ったスペースにボールが出て、前を向いた状態でボールを受けられれば、それこそ「決定的」なチャンスになります。 これはFWに限らず、どのポジションでも言えることです。 また、「ボディーシェイプ」は言い換えれば「ボールを受けた時に前を向いている」状態を実現する技術だとも言えます。 「スペースを利用する」「前を向く」というは「守備の原則の反対」と考えればより解りやすいかもしれません。
話を「パス」に戻しますが、パスを受ける側の「動きの原則」は、まず「(前に)スペースのある所へ移動」して「(ボールを受けた時に)前を向ける位置・方向」に自分の身体を置くことなのです。 どこにスペースがあるか?またはどこにスペースが出来ようとしているのか?を「判断」し、動き出すことがパスの受け手(この場合特にFWあるいは攻撃参加時のサイドバックやミッドフィルダー)には重要な事なのです。 この原則の上に「華麗なるスルーパス」や「大胆なサイドチェンジ」が成り立っています。 ★子供の場合、ただ無闇に「動いて」いる場合が多いようです。試合中に聞こえる指導者の声も、ただ「走れぇ!」とか「動けぇ!」などという声が多かったりしますので、じゃぁ、どこに、どう動くの?と思わず聞いてみたくなるような場面が結構あったりします。 ページトップへ戻る |